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融資利用の不動産購入、新築で自分で登記できるのか

司法書士として、いろいろな可能性を考えると、融資利用の有無にかかわらず不動産取引の場面では司法書士に依頼をしてほしいと考えますが、

とはいえ本人申請自体を法務局が否定しているわけではないので、できるだけご自身で、費用をかけずにしていきたいというお気持ちもわかります。

しかし、融資を利用する場合は、金融機関側が司法書士に依頼しないとNGを出すことが多いです。(例外もあります)

それはなぜかというと、いろいろ理由はありますが、簡単に言うと融資金の持ち逃げリスクを無くすためです。

その結論に至るまでに登記制度や決済の流れを説明しないといけなくなるのですが、、、

そもそも何故司法書士がいるのか。

①登記制度(不動産という重要な財産の得喪)はケースバイケースで色々と煩雑です。なので専門家に手続きを代行したほうが楽 という「専門サービス業」の側面と

②不動産取引で言うと売主(権利を失う代わりにお金を得る人)と買主(お金を失う代わりに不動産を取得する人)という真反対の当事者がいます。売主買主が親戚同士、親子兄弟間ならともかく、第三者同士であれば、お金の持ち逃げリスクや、不動産の名義だけ(場合によっては売却予定以外の不動産も)変えられてお金が入らないリスクがあります。その場合に司法書士が間に入り、名義変更できる書類を確認することで、安心して買主は代金を支払い、売主は権利証、印鑑証明書などの重要書類を司法書士に預け、取引が完了するという、「信頼できる中立の人」という側面があります。

また、万が一地面師や取引の事故が起きた場合でも、司法書士であれば保険に入っているので、保険から損害賠償されます。(ケースバイケースですが)


こういった理由から、司法書士自身が不動産を購入する場合でも他の司法書士に依頼することも多くあります。


少し話がそれましたが、②を融資を利用する場合はどうなるでしょうか。

売主、買主の立場だけでなく金融機関(不動産を担保に融資することで利息を得る/登記されなかった場合融資金の持ち逃げされて回収ができなくなる可能性がある)という立場の当事者が増えることになります。


登記手続きとしては1,所有権移転 2,抵当権設定という申請になるのですが、本人申請の場合、買主が1の所有権移転登記だけして、2の抵当権設定をせずに融資金を持ち逃げすることも可能になってしまいます。

また、2の抵当権設定登記をしたとしても、そもそも1の所有権移転登記に不備がある場合、自動的に2の登記もできないことになります。

そのため、融資をする金融機関としては、買主と金融機関の中立の人間であり、資格者である司法書士が登記手続きしなければ融資することは難しい、という考えになります。


新築の場合、こちらも抵当権設定については同様の考えになりますが、ハウスメーカー/工務店からNGが出る場合もあります。大手メーカーで、建物完成-資金実行(=引き渡し)のスケジュールが〇日以内と決まっている場合や、工務店で資金的余裕や融通を利かせることができない場合(資金実行(=引き渡し))、引き渡し日までに表示登記が完了していないと、所有権保存・抵当権設定登記ができないため、表示登記を自分でしたいと思ってもNGがでます。

それは、表示登記を土地家屋調査士でないものがする場合、原則として法務局の実施調査が入ります。すると、法務局の人員も限られていますので、登記申請から1ヶ月以上かかることも覚悟しないといけません。

となると、どうしても表示登記は自分でしたい場合、引き渡し日を伸ばす(せっかく完成した建物にすぐに住めない)か工務店に、代金後払いで先に引き渡しできないかお願いするようになります(大手メーカーは100%無理)。

通常の流れであれば、建物完成が近づく(クロスが貼られる頃)に土地家屋調査士が申請準備に入り、申請ー引き渡しまでに表示登記完了ー司法書士が所有権保存・抵当権設定の申請の連携も取れスムーズに資金実行=引き渡しが行えます。


では表示登記や、融資の抵当権設定部分だけ司法書士に依頼して、所有権保存や所有権移転登記だけ自分でしたい!という場合はどうでしょうか。

この場合は司法書士がNGを出すことが多いです。

先にも述べましたが、抵当権設定と所有権保存、所有権移転は同時に(連件で)申請をするため、専門知識のない方の作成した所有権保存、所有権移転の書類が不備がある場合、抵当権設定登記も自動的に却下になります。

とすると司法書士側としては、所有権保存、所有権移転は自分たちの仕事じゃない(依頼を受けていない)から自分たちの責任ではない!と言いたいところですが、ハウスメーカーや銀行に対してその理屈は通じません。

よって、必然的に所有権保存、所有権移転の申請書類の確認もしないといけなくなるのですが、、、

1,通常であれば申請日の数日前に書類が整っていたり、申請書のチェックができるのに、当日だったり直前になる。

2,司法書士がいつも使用している申請書の書式と異なるため、チェック箇所が多い(違和感に気づきにくくなる)

3,申請方法、書類のやり取りの打ち合わせが出てくる

4,結果、かえって司法書士の手間が増えるため、申請書を依頼者が作って、司法書士がチェックする方が報酬が高くなる(事務所が多い)。(いいから全部司法書士に任せてくださいよ!という心の声)


以上から、融資利用せず、すべて現金で支払う場合(もしくは先に現金で支払い、後で融資金を受け取る場合)はご自身で登記申請しても、ハウスメーカー、工務店、金融機関に迷惑をかけないのでOKですが、

融資利用をする場合は原則土地家屋調査士や司法書士に依頼することが必須と言うことになります。


少し話がそれますが、個人的には売主側の立場からすると、第三者に(売買対象物件以外の不動産が含まれている)権利書や印鑑証明書を預けるのはリスクが高い行為だと思われるので、辞めたほうがいいと思います。


たまに金融機関側で、上記の理屈をよくわかっていない場合や、長い付き合い、大口取引先であれば、融資利用の場合でも自分で登記がOKの場合もありますので絶対とは言いませんが、そもそも司法書士の手数料は数万~10万円程度のことが多い(内容になります)ので、その金額で地面師リスクや自分で時間とって手間をかけることが減るというのはコスパはいいと個人的には思っています。

地面師も司法書士を騙さないといけないからリスクが大きい=仕掛けを念入りにしないといけない=億越えの不動産じゃないと割に合わないだけで、司法書士が入らないのであれば一般の方を騙すのは3流の地面師でも簡単だと思います。


因みに例外的に、日本政策金融公庫の場合、抵当権設定登記を自分でするのはOKです。

これは、抵当権設定登記が完了後、完了した書類の提出後に融資が行われるためです。(通常は抵当権設定の申請日=融資実行)

事業融資の場合なので、住宅ローンはありませんけどね。


なんで自分でできないんだ!と聞かれたときに上記の理由を簡潔に説明できればいいんですが、なかなかそうはいかないので、いろんな方に閲覧していただいて、上記理由をご理解いただけると幸いです。

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